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2005年8月12日 (金曜日)

思い出話

今飲んでる信州の地酒「七笑」は、私の生涯のお酒になると思う。

jpg 子供の頃、毎年夏になると木曽に出かけていた。中津川で高速を下りて、国道19号沿いに木曽路をひた走る道すがら、「七笑」の看板が続くのだ。大きな立て看板「七笑」という漢字に「なゝわらい」と添えてある。5・6歳くらいだっただろうか。私はその「ゝ」が読めなかった。「く」がひっくり返っているとしか思えなかった。そして、車の中で、「あれ、『なくわらい』って、何?」と両親に聞いた。両親は大笑い。「あれはね、続けて読む字なの、『ななわらい』って読むのよ」と教えられた。でも、我が家ではすっかり『なくわらい』が定着してしまった。あれだけ木曽路に看板が出ていれば、商品が何であろうと十分な刷り込みとなるのも無理はない。でも、お酒の看板に気を惹かれ、そして期せずして、人生の深淵のように「泣く笑い」と読んでしまう私が、酒飲みになってしまうのも無理はないだろう。そして、そういう限りなく幸せな思い出とともに、私は大人になり、立派な酒飲みになった。

私の父は、お酒は「嗜む程度」にしか飲めなかった。でも、私が酒飲みになってしまったことで、私の家飲みに付き合って飲んでくれるようになった。旅行に出かけては「道の駅」や市場などで「きくちゃん、お酒はいいかね?おいしそうなのを探してみなさい」と言い、私がこれ、と思うものをにっこり笑って買ってくれた。たまの外食や、旅行先の夕飯では「きくちゃん、今日は運転しなくていいから、好きなのを飲みなさい」と、やっぱりお酒を飲ませてくれた。後から母に見つかると「またお酒買ってもらって!お父さんはほんとにきくちゃんに甘いんだから!」とよく言われたものだ。

父としみじみ最後に飲んだお酒は、去年の秋、下呂温泉だった。その日、私は何を飲んだか覚えていない。私が覚えているのは、父と母と3人でお酒を酌み交わしていたことと、父が言った「あぁ、娑婆はいいなあ。こんなにいいことがあるんだから、もっと生きなきゃいかんなぁ」という言葉と、そのときの仏様のような笑顔だけだ。

初盆を迎えて、父が帰ってくることもあるのだろう。思い出話がしたくなった。

「七笑」純米吟醸(七笑酒造) 原料米:美山錦(精米歩合/60%) 度数:15度 日本酒度:+1 酸度:1.5 吟醸ではあるけれど、吟醸香は必要以上に強くないところが好きだ。いかにも「米の酒」という懐の深さがあると思う。たいていどんな料理でも合う。するすると飲めるお酒。(センチメンタルの味付けもあるかも?)

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